号泣する人

帰宅して、家の扉を開けると、息子が嬉しそうな声で、「パーパ!」と言う。

先にご飯を食べ終えた息子は、私がご飯を食べる姿を見ながらテンションを上げる。

部屋の中を行ったり来たり、行ったり来たり、わけのわからないテンションで、部屋中を走り回る。

あっちゃ、あっちゃ、あっちゃ、あっちゃ!(あった。あった?)

んんん、しゃ!(でんしゃ)

くーるーま!

ひこうき!

きうきうしゃ!

ぺりぽぷたー(ヘリコプター)

と連呼して、さらにテンションを上げる。

兎に角、私が帰ってきたことが嬉しくてしょうがないようだ。


そして、夕ご飯を食べ終えた私は、息子と遊ぶ。

一緒にソファーで跳ねたり飛んだりしているだけなのだが、息子は、こんなに楽しいことはない、とばかりに喜ぶ。

ひゃひゃー!あひゃひゃひゃひゃー!

ひゃひゃー!あひゃひゃひゃひゃー!


何をやっても喜ぶ。


そんな姿を見ていたら、私、

頬に涙が伝ってました。

いや、気づいたら号泣してました。

こんな父親でも、喜んでくれる可愛い息子がいる。

それだけで。もう、十分なのだ。

生きがいなのだ。

なにも、いらない。。

と。


息子の遊びをやめさせた父親の罪

本日、1歳7ヶ月になる息子が、紙をビリビリに細かく破いて投げほていました。

「ダーーメ!そんなことしちゃ!」

何がダメなのか?父親としては、部屋が散らかるからダメという理由とその細かくちぎった紙を食べると困るからのダメを息子に押し付けています。

先週、木曜日の保育園からの日記。

新聞紙遊びをしました。

ビリビリとやぶき、やぶいた新聞紙をたくさん集めて、ひらひらと上から散らしたりして楽しみました。

頭の上からひらひらかけてあげると、ニコニコしていました。

。。。

ダメじゃないんだよ。

保育園で遊んだことを家でもやっていただけなんだよ。。。

何故、私は息子の頭の上から紙をひらひらとかけてあげられなかったのだろうか?

父親の勝手な常識を押し付けてました。





ゴールデンウイーク後の出社

ゴールデンウイーク明けの心は最悪だ。会社に行けば、何か仕事が溜まっている。トラブルの後始末がたくさんあるはずだ。

また、あの同僚と顔を合わせると何か言われる。

社内にいる人、人、人、みんな分かり合えない。打ち明ける人はいない。

そんなことを考えて電車に乗ると、心臓がバクバクして、どこかにいなくなってしまいたくなる。

しかし、駅に着いてしまった。

会社に行きたくない。

ホームのベンチで20分くらい時間を潰してしまった。

重い腰を上げて会社に向かう。

人、人、人、馬鹿みたいに人が同じ方向を向いている。

人の足を見ていると目眩で倒れそうになる。

俺は、会社に行きたくない。。

髄膜炎の疑い

私は滅多に風邪を引かない。

風邪を引かなくなったというのが正しいだろうか?

風邪を引かない私だから、少し具合が悪くても大丈夫。

そんな過信が生んだ、今回のひと騒動。

先週の水曜日。

仕事中、妙に後頭部が痛い感覚があった。咳をすると響いて痛い。階段を降りると響いて痛い。冷たいものを飲むと響いて痛い。

突然の痛みで、私は、耐えられなくなった。

会社帰りの夜。頭がズキズキ痛くて、痛くて、止まらなくなった。

これはまずい、これはまずいぞ。

乗ったことのない、特急の指定席を買い、座って帰った。

眠れば痛みもなくなるだろう。と思ったが、眠れない。痛くて全く眠れないのだ。


なんだこの痛みは?

その日は、妻と子供と共にすぐに眠りに就いた。

次の日の朝、目覚める。寝転がった状態でいると頭の痛みはなく、大丈夫そうだ。

立ち上がる。かなりの頭痛。ズキズキ痛む。昨日は、後頭部だった痛みが、今日は前頭部だ。


ズキズキ痛い。


上から押さえつけられているように痛い。頭の痛みが移動するってなんだ?こりゃ?


先ずは医者に行こう。

会社には、医者に連絡次第では、休むかもしれないと伝え、医者に行くことにした。 

医者に見せるが、風邪なのか、何なのか何も伝えられずに、漢方薬と痛み止めを渡された。

多分、風邪ということだろう。

少し会社に嫌気もさしていたこともあり、1日ゆっくりと休むことにした。

熱は37度6分ほどありました。

妻は、子供に移るといけないとのことで、すぐ近くの実家に帰って行きました。

悲しから心細い日。

だけど、仕方ありません。

移ったら大変だもの。

休みが長くなると、会社に行きたくなくなる。

そう思い、兎に角、薬を飲んでよく眠ることにしました。


次の日、朝、目覚めてすぐに熱を計った。

熱はない。

寝転がっている状態では、頭も痛くないようだ。

これは、会社に行けるな。

いや、これで会社に行かないと、

もう、一生、会社に行きたくなくなる気がする。

今日は、行こう。起き上がると、頭がズキズキ痛い。

昨日の後頭部の痛みが、左横に移動してる。

時に右に移動もする。


何だこの移動する頭痛は?初めての感覚。やばいのか?

そう思ってるうちに今度は前頭部に頭痛が移動している。

もう1日休むかな?

しかし、このまま休むと会社に行きたくなくなる。熱はないから行こうと決め、会社への電車に乗る。

満員電車で妻に連絡する。

熱は下がったので、頭は痛いが、会社へ行く、と。

すると、しばらくして心配した妻から電話が掛かる。

電話に出れない。ラインが来た。

そんなに頭が痛いのはおかしい。

大きな医者で診てもらったら?

普段、そんなことを言わない妻の言葉が気になり、私は、駅で途中下車して、脳神経外科の病院を調べることにしました。


何やら自宅の隣駅に脳神経外科がある、とのこと。

隣駅に足を踏み入れます。

その前に、会社に電話しないといけません。

同僚に電話します。

電話繋がりました。

「すみません。また、今日も頭がズキズキ痛くて休みます。」

同僚の返事。

私の言葉を遮るように、

はい、わかりましたー。

たたみ込むように、

それで、あれってどうなってんの?

ねえ?

嫌な奴です。

具合が悪かろうが、その反応とは!

ぶち殺してやりたいと思いましたが、そこは低姿勢で、すいませーん。ほんとーに、すいませーん。

と言っときました。

(会社なんて、誰も助けてくれないですよ。だから、勇気を持って休みましょう。)

しばしの腹ごしらえをした後に、

脳神経外科に行きました。

少し待たされていると、心配した妻が後から医者に来ました。

私の番がやってきました。

妻も一緒に診察室に入ります。


熱が下がっているのに頭が痛いこと。

頭痛の位置が変わること。

今まで経験したことのないズキズキとした痛みがあること。

全て話しました。

するとお医者さんは、言います。

髄膜炎の可能性も否定できないから、先ずは、MRIを撮りましょう。


髄膜炎


そのフレーズを想定していなかったので、パニックです。

髄膜炎は、風邪を拗らせると菌が入り、重症化すると命を落とす場合もある。と、言います。


その髄膜炎の可能性も否定できないとは?もうパニックです。

すぐにMRIを撮るために、レントゲン室に入ります。頭にヘッドギアのようなものを被り、寝かされます。工事現場の音のような、鉄筋を叩くような音がヘッドギアから聞こえて来ます。

目を閉じていると、色んなことが思い起こされます。

髄膜炎で死んじゃうのか?俺?

まだ、小さな子供がいるのに。。

1歳5ヶ月の息子が、私に笑顔を振りまく姿や喜ぶ顔が瞼の裏に浮かんできたら、涙が溢れてきました。

俺は死んでしまうのか?

涙が止まりません。


10分ほどして、MRI検査は終わりました。

お医者さんに呼ばれます。

写真を見せられます。

写真を見る限りでは、特に問題はなさそうだが、髄液をとって検査してみないとわからない。

市の大きな病院の紹介状を書いてもらい、妻と急いでタクシーを飛ばして、髄液検査をすることになりました。


病院で紹介状を渡します。

妻と共に、すぐに担当医に通されます。

担当医は、30代前半くらいの若い医者です。

あまり威厳のなさそうな若手の医者は、MRIの結果を見ながら、この画像を見る限り、大丈夫かとは思いますが、見えてないところも出て来るかもしれませんからねー。

髄液検査しましょうねー。

腰に管を刺して、髄液を取りますよー。麻酔をするんで、痛みはないから大丈夫ですよー。

ただ、その麻酔の時に痛いかもしれないですけどねー。

と、柔らかい口調で私に髄液検査の説明をしてくれた。


説明の後、暇を置かずにすぐ、検査室に通された。

妻と別れる。

不安が募る。。。


看護師さんに言われる。

「はい、上半身、シャツ1枚だけになってもらえますか?シャツ1枚になったら、この台に横向けに寝てくださいねー。あっ、あと、今日研修医が見学しますが、気にしないでくださいねー」

言われることに、一々答えるしかない私は、台の上に乗り、未知なる髄液検査を受けるまで身体を硬くして待つことになる。

担当医が入って来る。

はい、これから髄液検査に入りますよー。腰とお尻の間に麻酔しますからねー。少し痛いかもしれませんが、痛かったら言ってくださいねー。


あいっ。

短く答えると、麻酔の注射針が私の腰あたりに刺される。

ちょっと痛い。


かなりガチガチに身体がこわばったのか、看護師さんが私に優しく語りかけてくれる。

「すぐ終わるからねー。リラックスしてねー」


麻酔の注射が3回ほど刺された。

はい、これから髄液を取りますよー。管を通すから少しドンって押される感じしますよー。

痛かったら言ってくださいねー。


もう、麻酔をかけているので、痛みはない。しかし、上半身はガチガチに固まっている。


はい、管、通りましたよー。

これからゆっくり髄液が落ちて来るので、時間かかりますけど、もう少し動かないでくださいねー。


と言われて更に上半身はガチガチになっていました。


はい。髄液取れましたよー。

綺麗な無色透明ですよー。

ドロドロしていないから大丈夫でしょう。


トータル20分くらいだったろうか?


髄液検査は終わり、別の部屋に手術台ごと運ばれる。

手術台で移動なんて、思い病気の患者みたいだ。


30分ほど安静にするように言われた。

昼も食べずに私に付き添ってくれている妻に昼ごはんを食べて来るように促し、私は、しばらく眠った。


目覚めると妻も戻ってきていて、担当医に呼ばれるのを、待った。


50分ほど待たされた後、担当医に呼ばれる。


緊張の瞬間だ。

髄液も透明だからということだったので、髄膜炎は大丈夫だとは思うが、正確に答えを聞くまでは、安心できない。髄液は綺麗とはいえ、何か見つかったかもしれぬ。、


診察室に呼ばれる。

妻と一緒に結果を聞く。

担当医が口を開く。


検査の結果ですが、髄液も綺麗で、異常もなかったので、髄膜炎ではないですよー。

よかったですねー。

単に風邪をこじらせて、副爆炎が重くなったために頭痛が酷くなってるのかもしれませんねー。


話を聞いて、ほっとした。

本当に、よかった。よかった。

と妻と喜んだ。


朝の9時から始まった診察は、意外な展開を経て、夕方4時になっていた。

私は、しばらくして、遅い昼ごはんを食べた。


ほんとーになんともなくてよかった。しかし。風邪は怖い、ちゃんと治さないと重症化するんだな。


家に戻り、幼い息子に再開した私は、息子を強く抱きしめた。


ちゃんと生きよう。


そう、決心した。



























新卒社員

私は四月に新卒社員が群れをなして歩く姿が嫌いだ。

あのフワフワした学生の延長のような、帰りは仲間とつるんで仲良くお友達感覚で飲みにいくような、遊び感覚のような、あの姿に酷い嫌悪感を覚えてしまう。

会社に雇われる事を深く考えずに、一生懸命就職活動をやってやっと入れたのだろうけれど。。


将来は、くたびれたサラリーマンやサラリーウーマンになってしまい、やさぐれてくんでしょ?

希望はやがてがんじがらめの現実に変わるんでしょ?

そんなに楽観して、ヘラヘラ過ごしちゃだめだよ。

と、俺はかつての新入社員の自分に語りかけるのだ。


そんな俺は、まだ、自分に合う仕事がわからずにフワフワとして、天職なんぞを探し続けている。


ゆっくりできるはずのゴールデンウィークにイライラして、明けの仕事の憂鬱に怯えて過ごすのだ。


桜坂

先日、朝から具合が悪く、頭がガンガンしてどうにもこうにもならない時がありました。

妻に早く医者に行った方がいいと促された私は、痛い頭に響かないようにそろりそろりと、隣町の医者に足を踏み入れました。

9時半から診療していると聞いていたので、それより15分くらい早く行ったのですが、既に待合室は、患者さんでいっぱいでした。

そのお医者さんの患者の年齢層はかなり高め、言ってしまえばおじいさんとおばあさんしかいない所です。

それは、全然いいんですが、

病院内に流れるBGMが古い気がします。

日本の歌謡曲だったり、外国のジャズだったり、シャンソンだったりと幅広く流れていますが、時代が、昭和初期。

青い山脈とか、カンカン娘とか、マレーネデートリッヒとか、、古いラインナップの音楽なので、正直自分には馴染みがない。

場が持たずに、持ってきた本でも読もうと思うんですが、そのBGMを声に出して歌うおばあさんの声が気になり、読書に集中できません。

1時間程待たされても中々自分の診察の順番が来ません。

読書には集中出来ないし、スマホでもいじることにしました。

スマホを触っていましたが、周りのお年寄りで、スマホをいじっている人がいない。

・・・段々気まずくなって来ました。ペースメーカーをしているご老人がいるかもしれない。

スマホをいじることを断念しました。

目を閉じて、BGMに耳を傾けます。

来生たかお井上陽水、微妙に私にもわかる曲が流れ始めます。


次に流れてきたのは、桜坂。

♪君よきっと幸せにー、風にそっとうたーうよー、ウーイエー、あいはーいまーも、あいのーままにー♪

福山だなー。福山雅治だなー。


中略


♪君だけーがー恋をーしていーたー憧れーをだきよせーてー、君はうたーうよー♪

♪君よきっとしあわせにー、風にそっとうたーうよー、ウーイエー♪


福山じゃないね。

福山じゃないね。

これ。

全く知らない人が、カバーをしている曲でした。


だれやねん!