コロナでも、人生はつながっていく

私の70代になる父と母は、このコロナで、4歳になる息子ともう10ヶ月程会えていなかった。

あまりに会えていなかったので、このままでは、本当に会えなくなるのではないか?

と、不安になった私は、外で過ごすということを条件に、10ヶ月ぶりに、息子を父と母に会わせることにした。


息子は、久しぶりに私の父と母に会えるということで、3日前からテンションが上がりまくりだった。

「あと、3日寝たらー!じいじとバァバ来る?」


「あと、2日寝たらー!じいじとバァバ来る?」


「今日寝たらー!じいじとバァバ来る?」


毎日、毎日、息子は私と妻に今日のことを確認してきた。本当に心待ちにしていたのだ。

テンションが上がりまくり、踊り出すほどだ。


当日。


待ち合わせの隣町の駅で私の父と母を見つけた息子のテンションは、最高潮に達した。


じぃじー!バァバー!

叫びながら、駆け寄る息子。

喜びが弾け飛んで、コロナまで吹き飛ばさんばかりの勢い。


私の父と母もものすごく嬉しそう。


大きな公園を目指して、私と妻と息子、父と母と遠足気分で歩く。


公園までの道すがら、海の見える歩道がある。

息子は何度も何度も、じぃじとバァバの姿を振り返り、楽しそうな笑い声を上げる。


70代の父と4歳の息子

ススキをちぎり、2人で顔をくすぐりあったり、虫をとったり。

無邪気な2人。


公園でお昼を食べる。

唐揚げに煮卵におにぎり、

たくさんのご飯に息子はご満悦の様子。

父も母も妻も、みんな良い顔をしている。


トンビにご飯を取られる父。


息子が「トンビー!こっちにくるなー!俺がおっぱらってやるー!」と言うと、皆が笑い声を上げた。


お昼を食べ終えて、皆で公園の中をしばらく歩く。


展望台が見える高台を目指すことにした。

坂が多い道だ。

駆け上がる息子は、元気。

父も母もその姿を微笑ましく見守りながら歩く。


展望台に着く。

海を一望できるその場所でみんなで写真を撮ったり、景色を眺めたりした。


展望台を見終わり、山道を下る。

まだまだ、遊び足りない息子は坂を一気に駆け下りる。


元気。元気。

坂道を降りたあとも息子は、まだ遊び足りないという。


公園にブランコがあった。

ブランコに乗り、じぃじとはしゃぐ息子。

「もういっかーい!もういっかーい!」

楽しすぎて、何度もリクエストをする息子。


たくさん遊んだら、もう、夕方。

楽しい時間はすぐに過ぎてしまう。


そろそろ帰ろうと、駅を目指して元の道を戻る。


父と母の後ろ姿を見た。

その後ろ姿は、若い時に比べて確実に細く弱々しいものになっていた。

いつの間に、時が流れてしまっている。

なんだか、切ない気分になってしまった。


駅で父と母を見送る。

ホームでずーっと車内の父と母に「じぃじー!バァバー!」と叫び続ける息子。


何度も何度も声を張り上げる。


映画のワンシーンのようなその光景がキラキラと輝いて見えた。


家に帰る。

テレビを見ながら息子はくたびれて眠ってしまった。

妻は風呂へ入っている。


私は料理を作っていた。

野菜を切りながら、思い出が蘇る。


父と母。

私の幼い時、今日のように私をいろいろなところへ連れて行ってくれたんだな。

まだまだ若くて一緒に走り回ってくれた父の姿、優しく私を包み込むように微笑む母の若い頃の姿を思い出したら、涙がとめどなく流れてしまっていた。。


あの頃の父と母のように、今、私達も息子を大切に育てている。


たくさん笑って、この時間を大切にしよう。

父と母にも本当はもっと息子を会わせたい。あと何回合わせられるんだろう?


そして、人生はつながっていく。