おじさんを救った話

あれは、3年ほど前の冬だったろうか?

会社帰りに妻と東京駅地下鉄構内の中華料理屋でご飯を食べ、さぁ、帰ろうかと電車に乗る前に起きた出来事。

改札を通る時、陽気なほろ酔い気分のおじさんが2人、肩を寄せ合い別れの挨拶をしてるのを見かけながら、改札を通過した。

今日は楽しかったよー!じゃあ、またなー!気をつけてー。

と言う声と酒臭さを避けて我々は駅ホームに向かう、長い長いエスカレーターを降りていた。

美味しいご飯を食べて、こちらも少しほろ酔い気分。

あれ?後ろを振り向くと、さっきのおじさん。陽気に酔ってる。ゆーらゆーらゆーらゆーらしてる。気持ち良さそうに。。

 

右側に気をつけろ!

 

その時、おじさんがバランスを崩し、転げ落ちた。真っ逆さまに。

エスカレーターに居合わせたのは、私と妻と30代くらいのOLと40代のサラリーマンの4人。

みんな、思った。

あっ!危ない!

 

そう思ってる内にも、おじさんは落ちてゆく。

何とかしなきゃ。

止まらない。止まらないおじさん。

「うわーーー!」

おじさんの叫び声。

 

先ず、40代のサラリーマンが動く。

下に向かって真っ逆さまのおじさんを止めにかかる。手を伸ばすが間に合わない。

OLが叫ぶ。

「止めなきゃ。止めなきゃ。」

私の出番。フットサルをやってるので、走りは大丈夫。(あっ、私も40代のサラリーマン。)

おじさんが落ちるより早く、階段を駆け下り、エスカレーターの停止ボタンを目指す。

下に降りるが、こんな時は、焦る。

「ない、ない、ない、ない、ない、ない、ない、ボタン、どこだ?」

そうこうしてる間に、おじさんは、落ちてくる。

「まずい、まずい、おじさん、頭打っちまうよ。どうしよう、どうしよう、。。。あったー!」

停止ボタンを押す。

5段手前で、エスカレーターが、止まった。

 

まるで、映画アンタッチャブルの階段落ちシーンのよう。

 

40代のサラリーマン。OL。私。そして、妻もおじさんに駆け寄る。

先ずは、おじさんをエスカレーターから、地上に移動させる。割腹がいいおじさんなので、かなり重い。4人がかりで、下に下ろす。おじさんは、額と捲り上げたシャツからのぞく肘から出血。

妻がハンカチで止血する。

(妻は、看護師。)

 

おじさんの意識はある。

「すんませーん。すんませーん。」

止血していた妻の白いコートの袖は、おじさんの赤い血で染まってしまった。

 

駅員が駆け寄る。

おじさんをタンカーに乗せる。

おじさん、身体の何処かを打撲しているようだ。骨折してるかもしれない。

 

しばらくして、救急車が来た。

おじさんは運ばれていった。

 

無事だといいなー。

 

その後、私と妻の間では、エスカレーターに乗る時は、後ろに気をつけよう。

という注意事項が出来た。

 

お酒は適度に飲みましょう。