バリ島の思い出 その1

2014年10月16日。

その年の8月17日に結婚した私たち夫婦は、7泊9日の新婚旅行へとインドネシアバリ島へ旅立った。

 

私、海外に行ったことは、過去に1回。なぜか、バブルの時に、高校の修学旅行でカナダに行った時以来の海外なので、25年ぶりとなる。

羽田に9時半頃に着き、搭乗手続きを済ませ、妻と他の飛行機の発着を眺めながら、簡単な朝食を取る。

テンションが上がる妻とは、反対に、私は、なにかドキドキしている。

「パスポート落としてないよな?」「乗車チケットおとしてないよな?」

「飛行機かー。大丈夫かな?」「英語しゃべれないけど、大丈夫かな?」

そんなこんなで、飛行機の乗車時間がやって来た。

飛行機に乗り込む。妻と離れないようにくっついて歩く、なさけない夫である。

席に座る。トイレ近くの席だ。なぜか、スチュワーデスが座る席の近く。

救護要員?妻が、医療関係だから?私は、焼きそばしか作れない男ですけど?

 

11時45分。ガルーダインドネシア航空の飛行機が、バリへ出発のアナウンスと共に羽田を出発する。

 

飛行場から飛行機が飛び立つ。飛び立たない。滑走路を走っている。車輪の音と共にガタガタと振動が起こる。

いつ、飛び立つのか?いつ飛び立つのか?

緊張がじわじわと包む。

妻に話しかけようとしたが、妻は、安心して、もう寝ている。強心臓なのか?

いよいよ飛び立つか?

車輪は、滑走路をまっすぐ走っている。

インドネシア語で、機長がアナウンスし、しばらくして、轟音と共にゆっくりと空へ。

フワ~とした感覚と共に、飛行機は、飛び立った。

雲の上を飛行機が飛ぶ。不思議な気分だ。

冷静に下の景色を見ると怖い気もする。

しかし、私の不安な気持ちはその時には、もう消えていて、少し、ワクワクしている。

 

まだ、日本。どこかの工場群の煙が見える。

しばらくすると、広大な海が光を浴びて、キラキラ輝いている。

なんともちっぽけな富士山が見える。

右翼から見える日本は、ただ山だらけの茶色い土地だ。

日本の狭苦しいオフィスの小さな一点で、こせこせと仕事をしていることが馬鹿馬鹿しくなる。

隣で、寝ていると思っていた妻も起きていて、空からの日本を楽しんでいた。

旅行のガイドブックを一緒に眺めながら、旅行のプランやらとりとめもない会話をしている内に、外を見ると、飛行機は、日本から完全に離れてしまっていた。

今は、どの国の空を飛んでいるのだろう?

右翼から差し込む太陽の光が反射して眩しい。

しばらくして、睡魔が襲ってきて、今度は、私が眠りに就いてしまった。

 

目を覚ますと、現在、15時18分。

到着の17時55分まで、もう、あと2時間弱となっていた。

トータルで、7時間、飛行機に乗る予定だが、全く長く感じない。

ガイドブックである程度のインドネシアの情報を仕入れて来た妻とは違い、

私は、インドネシアを全く調べずにいた。

せめて、何か、文化に触れておこうと思い、機内の音楽サービスで見つけた、インドネシアPOPを聞いて、インドネシアへの思いを馳せた。

私が聞いていて心地よかったのは、女性ボーカルのMaudy Ayudaという歌手の歌だった。

合間に、妻と下らない話をしながら、時間をつぶしていると、いつの間にか、あと10分で、テンパサール国際空港へと到着するという。

ワクワクとソワソワした気持ちが同居して、変な表情をしていると、

妻が笑っていた。

飛行機は、高度を下げ、目的地へむけ羽を下ろそうとしている。

あっという間の7時間だった。 

 

つづく。