盗みを疑われたときの気持ち

私、 小学生の時、サッカー少年もどきでした。

サッカーはうまくなかったけど、サッカー漫画を読んだり、高校サッカー選手権を観戦して自分も上手くなった錯覚に陥ったりしておりました。

サッカー漫画といえば、私の年齢では「キャプテン翼」全盛期でしょうか。テレビアニメにもなりましたし、当時の子供たちの間でもその登場キャラクターの着るウエアや靴、プレースタイルを真似ようと小学校中がキャプツバマニアの小学生で溢れておりました。

私もその中の一人で、プーマやらアディダスの靴や帽子を親にせびり、買ってもらっていた記憶があります。

 

「そうだ!今日はキャプテン翼5巻の発売日だ!」

当時小学1年生のある日の私は、近所の小さな本屋に足を運び、キャプテン翼の5巻を探しに行きます。

その本屋は、漫画の陳列が悪く、子供の目線より上の場所に商品を並べているので探しづらいことこの上ありません。

当時の私は、人に話しかけられる勇気のない人見知り少年でしたので、黙って目当ての商品を探すしかありません。

2度見、3度見。。

何度見てもキャプテン翼の5巻はありません。

もう30分程経ったでしょうか?親からもらったお小遣いを握りしめる左手も汗ばんでいます。

「ないなー。どうしてもない!キャプテン翼の5巻」

そんなことを思っていると、私の頭上斜め45度上あたりから、大人の声が聞こえてきます。

「おまえ、盗んだろう?」

声の主は、神経質そうな表情で無精ひげを生やした30代くらいの店主です。

私は、盗んでもいないのにそんな無神経な言葉を投げかけられ、

息が詰まりそうになりました。

キャプテン翼の5巻を探していただけなのに。。

店主の心ないひとことが頭の中を猛スピードで駆け巡ると、私の心拍数は上がり続け、なにも返すことができず、店を飛び出しました。

家に帰るまでの道で泣きながら帰ったことを覚えています。

 

その話を家に帰り泣きながら、母親に告げると、

母は、私を連れてその街の小さな本屋へ強烈な抗議をしにいきました。

例の神経質そうな店主がいます。

「うちの子が、盗みを疑われたって泣いて帰ってきたんだけど!盗んだ証拠はあるの?単に漫画を探しに行っただけじゃないの!あたしはね。うちの息子にお金を渡して、買ってきてもいいと言ったんだけど?盗みを疑うなんて、何考えてんのあんたは??」

店主は、ひるみます。

いや、そういうつもりではなかったんですけど。。。

「じゃあ、どういうつもりなのよ!もう、この本屋では買いません!」

捨て台詞を店の中に残して、我々は店を後にしました。

 

母は強い。

40年以上たっているのに未だにこの記憶が残っているということは、相当強烈な印象だったのでしょう。

 

私ももし、息子にこんな理不尽な出来事が起こったら、身を挺して子供を守ろうと思います。

 

ところで、数十年前にその本屋のある場所を通り掛かったところ、すっかりなくなっており、違うお店になっておりました。。

 

店主は、本屋の経営状態が良くなかったのでイライラしていたのでしょうか?

しかし、盗みもしていない子供を一方的に盗みと決めつけるような店は、なくなってしかるべきなのかもしれません。

 

廃業した店主は、どんな人生を歩んでいるのだろう?