あれは小学四年生の冬だったでしょうか?
私に、求愛ダンスをしきりにする程、私のことを愛してくれた文鳥のピー助君。
小学一年生の時、父と立ち寄った渋谷は道玄坂の小鳥屋さんで、彼を見つけました。
店の親父にスポイトで餌を与えられている白文鳥の雛。どの文鳥よりも強く前に出てご飯をもらうその姿に、直感で生命力を感じ、父に頼みこみ、飼うことにしました。
お湯でふやかした文鳥用の餌をスポイトであげる。ピーピー、と、可愛い声をあげながら、満足そうな表情で、それを流し込む。鳥籠から解き放ち、頭や肩に乗ってくる彼と何度も遊んでいました。
私たちは人間と鳥という生物の違いはあれ、簡単に壊す事の出来ない固い友情で結ばれていました。
にも関わらず、あの四年生の冬は、彼を裏切ることになってしまいました。。
家のお手伝いとして、部屋の掃除の為に、掃除機を回していた時、掃除機の音が怖かったのか、ピー助くんは、掃除機に敵意むき出しで怒鳴り声をあげます。
グル〜グルルル〜。
そんな彼に対して、私は軽い気持ちで、鳥籠の中に掃除機を入れてしまいました。
「うるさいなー。」
シュタン!
という音を立てて、彼は掃除機の中に吸い込まれてしまいました。
私はパニックになり、どうしていいかわからず、彼をそのまま放置しようとしてしまいました。五分くらいでしょうか?
ピー助くんが居なくなったことに気づいた母が、私に言います。「ピー助は?」
私はオロオロしながら、母に事情を話すと、冷静に、
「なんだー、早く取り出してあげればいいじゃない。」
といいながら、掃除機とホースの連結部分に挟まった、ピー助くんを救出しました。
力なく鳴くピー助くん。
ひどいことをしてしまったと、顔面蒼白の私。
しかし、ピー助くんは、力ない状態でもトントン跳ねて、私の所に来て甘えます。
こんなひどいことをしたのに、裏切らない彼に、私は、驚きと共に涙しまた。
もう、決して裏切らないよ、と。
それから、9年も生きて、高校生になった私を見守り亡くなった彼ですが、未だにその時のことを思い出すのです。
今も遠い空から私を見守ってくれてるだろうか?